設備管理とは
経営の根幹に関わる「設備管理」
企業は設備を使って作った製品を顧客に提供します。それによって社会のニーズに応え、従業員に生活の資を提供し、株主にしかるべく配当をする――そういった形ですべてのステークホルダー(利害関係者)に貢献するのが企業であり、その責任を負うのが経営者だということになるでしょう。
企業が生産活動を続けるためには、「設備の機能を必要なレベルに維持」しなければなりません。これを可能にするのが設備管理(保全)であり、企業は設備管理を通じてロスをなくし、リスクを最小限に抑えることによってステークホルダーに貢献します。“設備が健康”でなければ、企業の永続的経営は不可能です。
「設備管理」の位置づけ
経営意思を具現化する経営マネジメントにおいて、設備に関わる部分は共通的に、横串としての設備管理が担っています。
このように各分野から見れば“下支え”の「設備管理」ですが、横に大きな広がりを持つことから、経営に直結した機能として捉える必要があるでしょう。
「設備管理」の歴史
第二次大戦後の復興期に、我が国では多くの工場やプラントが建設されました。設備に関わる技術は欧米からもたらされ、同様に保全の技術も輸入されてきました。
つくればつくるだけ売れた“右肩上がり”の時代から安定生産の時代にかけて、設備が壊れたら直す「事後保全」から壊れる前に手を打つ「予防保全」へ、そして全員参加で生産現場を良くする「TPM*」へと、現場での取組みを主体として設備管理は進化し続けています。特にTPMによって、設備管理の中に、オペレーターの役割や改善文化が取り入れられたことが特徴といえます。当会(JIPM)が社団法人化されたのは、正にこの間の1981年です。
*TPM:全員参加の生産保全/Total Productive Maintenance
しかし時代が進むにつれ、設備は古くなり(設備の老朽化、高経年化)、能力の高いベテランが退職していきます。欧米では、わが国より一足早くこの問題が顕在化し、1990年代からリスクマネジメントの考え方を設備管理に取り入れるようになりました。我が国では、2000年代に入る前後から事故や災害が増加しはじめ、設備管理が経営課題として認識されるようになったのです。これに対応して、当会では、経営にとって最適な設備管理の仕組みを「MOSMS*」として提案しています。
*MOSMS:経営に資する戦略的保全マネジメントシステム/Maintenance Optimum Strategic Management System
「設備管理(保全)」に使う要素技術は、進化に伴い増加していきますが、古い技術が捨て去られることはありません。拡大する一方といえます。すなわち、変化する状況に応じて、新旧の技術を使いこなしていくマネジメントが重要といえるのです。昨今では、ICT、IoT、AIなどの情報技術の活用が広く論議されています。
「設備管理」の定義と範囲
「設備管理」という用語は、JIS(日本工業規格)においては「生産管理用語」の中で定められています。その定義としては、
『設備の計画、設計、製作、調達から運用、保全をへて廃却・再利用に至るまで、設備を効率的に活用するための管理。(備考 :計画には、投資、開発・設計、配置、更新・補充についての検討、調達仕様の決定などが含まれている)』とされています。
また、JISの「設備管理」の中で、「保全」や「設備保全」がそれぞれ定義されていますので、少しく複雑です。
そこで当会においては、 「設備管理」と「保全」を同義としてとらえ、次のように定義したいと思います。
「設備管理」または「保全」:企業の永続的な経営を可能にし、経営者、従業員、顧客、株主などの利害関係者(ステークホルダー)の利益を最大にするために、プラントおよび設備の全ライフサイクル、すなわち①設計・製作、②調達、③施工・試運転、④運転、⑤検査・整備(補修を含む)、⑥廃棄の各段階で期待される機能を保ち、それによってサイト内・外のロス・リスク低減に寄与する役割および組織的機能を「設備管理」または「保全」と呼称します。
重要なのは、“設備が壊れたら直す”という狭い範囲ではなく、設計-運転-検査・整備(補修)というすべての段階で設備が健全であるようにマネジメントすることが、「設備管理」であるということです。
設備管理(保全)の機能の例(設備管理のライフサイクル段階別)
設備管理段階 | ||
---|---|---|
設計~試運転 段階 |
プロセス・ライン設計上のリスクアセスメント | |
装置・機器設計上のリスクアセスメント(外部調達を含む) | ||
デザインレビュー・MP情報反映 | ||
機器製作品の検収・立会検査 現地据付・試運転・立上げ |
||
運転操作 | 運転操作 | |
段取り・調整 | 正しい段取り | |
段取り短縮改善 | ||
製造条件変更に伴う変更管理 | ||
品質管理 | 日々生産での良品管理活動 | |
日常保全 | 給油・増締めの実施 | |
清掃点検・傾向管理 | ||
小補修(部品取替え、漏れ修復、バルブ修復など) | ||
異常の早期発見・是正 | ||
高度な運転監視技術の導入・投資 | ||
各種改善活動 | チョコ停防止 | |
設備改善を要する小力化・省力化 | ||
設備改善を要するリードタイム短縮 | ||
からくり改善などの現場改善 | ||
運転による整技能の標準化 | ||
保全段階 ー保全計画 |
保全計画策定 | 重要度設定・見直し(リスクアセスメント) |
保全データの分析 | ||
保全計画の策定(検査、設備の全体計画) | ||
保全結果の評価・計画修正 | ||
設備管理の標準化 | ||
定期設備 | 定期補修・取り換え、給油 | |
定期的塗装 | ||
定期工事(オーバーホール) | ||
定期検査 | 定期検査 | |
現地据付・試運転・立上げ | ||
稼働中巡視・検査(五感巡視、見える化、簡易診断) | ||
・検査結果の判定、修復実施 |
設備管理段階 | ||
---|---|---|
故障修理 | 非計画的な事後修復削減 | |
発生時の分析、対策立案 | ||
恒久対策(再発防止) | ||
(続く)保全段階ー保全計画 | 段取り・調整 | 短時間の故障発見技術 |
工法改善など修理時間短縮 | ||
保全作業の安全向上 | ||
検査技術の開発・向上 | ||
設備信頼性向上による故障原因 | ||
高度な運転監視技術の導入・投資 | ||
緊急時対策 | 産業災害対策(爆発火災、自然災害等発生等) | |
クレーム対応(品質不良品流出など) | ||
保全段階 ー保全実施管理 |
保全予算実績管理 | 保全費(診断検査・補修整備) |
維持更新投資・改善費用 | ||
工事管理 | 工事計画作成 | |
工事進捗管理、現場工事監督 | ||
検査・工事後検収(工事品質チェック) | ||
記録の評価・分析 | ||
安全管理 | 現場安全管理(パトロールなど) | |
予備品管理 | 適正予備品管理 | |
適正な予備品項目・個数管理 | ||
倉庫のSS、物品の入・出庫管理 | ||
情報管理向上 | 故障など保全情報管理 | |
予備品情報管理 | ||
保全段階 育成活動 |
自社社員育成 | 専門保全員育成 |
保全管理者の育成 | ||
海外要員の育成 | ||
協力会社など育成 | 協力会社育成 |
「設備管理」から見た人材育成
当会では、「設備管理」を遂行するための人材育成の支援として、階層別教育プログラムを提供しています。
代表的なプログラム
取得できる「設備管理」の資格
当会で取得できる「設備管理」の資格には下記があります。
機械保全技能検定
技能検定とは、働く上で身に付ける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度です。機械保全技能検定は、1984年から機械の保全に必要な技能・知識を対象として実施され、2015年度から当会が厚生労働大臣指定試験機関として試験を実施運営しています。
自主保全士認定制度
製造オペレーターに求められる知識と技能について、製造部門が受け持つ保全の一部機能や管理技術を評価するために当会が定めた認定制度です。2001年度より、「検定試験」および「通信教育」を通じて、「自主保全士」を認定しています。
計画保全士養成コース
技術マネジメントの中核コースとして位置づけられ、設備管理を担う専門保全技術者を対象に、「製造現場における計画保全のマネジメントリーダー」の養成を目的としています。計画的な保全のPDCAを廻し続けるために、「管理技術」と「固有技術」を身に付けた中核人材が「計画保全士」です。修了者は、「計画保全士」として日本プラントメンテナンス協会から認定されます。
設備管理士養成コース
1970年に開講以来、88回以上の開催を数える伝統あるもので、「生産保全のマネジメントリーダー」の育成を目的にかかげ、上級管理職、技術スタッフ、工場経営者(候補者)を対象として、生産保全の経営における位置づけ、必要な総合的管理技術を提供するものです。「生産保全のマネジメントリーダー」とは、全社経営方針における工場運営・保全方針を理解し、当該事業場における保全戦略を立案し、実行する責任者です。
防食施工計画士コース
重大な経営ロス・リスクを引き起こす可能性を持つ機器・配管類などに対して、正しい防食技術を適用することをねらいとして、最適な防食施工の計画・管理を、設備管理の観点からとらえ、管理技術と専門技術のポイントを習得します。防食の知識と技術が必要な設備管理の担当者(工事の発注者)と、施工企業として施工計画・品質管理を行う担当者(工事の受注者)の双方が対象です。修了者は、日本プラントメンテナンス協会と樹脂ライニング工業会により、「防食施工計画士」として認定されます。
TPMインストラクター養成コース
TPM導入・定着のための社内インストラクターとしてふさわしい知識と教育スキルを身に付けていただくことが目標です。
コース修了者には、当会認定「TPMインストラクター」((社)全日本能率連盟登録資格第89号)の資格称号を授与いたします。
各サービスのページへご案内
当会では、「設備管理」を支援するさまざまな活動を実施しています。各サービスのページへご案内いたします。
- ●計画主導の保全の実践と教育
- 「計画保全」ページへ(含むMOSMS)
- ●ロスゼロを生み出す現場活動と表彰制度
- 「TPM」ページへ
- ●ローコストで現場を良くするからくり改善
- 「からくり改善」ページへ
- ●保全のための国家検定
- 「機械保全技能検定」ページへ
- ●未然防止を担うオペレーターのための資格
- 「自主保全士」ページへ
- ●お役立ち資料や地区活動
- 「情報収集・資料」ページへ
- ●開催中のセミナーや発表大会
- セミナー・イベント情報
- ●報告書やガイド類
- 「報告書・ツール販売」一覧へ